固定価格買取制度とは?成り立ちや2019年問題について解説

エココト編集長 2022-6-15
電気の固定価格買取制度について書かれた記事のイメージ画像です。緑の芝生の上にたくさんの黒いソーラーパネルが並んでいます。

現在の日本では、太陽光発電など再生可能エネルギーの売電価格やルールを定めた固定価格買取制度があります。しかし、これまで再生可能エネルギーに触れたことの無い方にとっては、良く分からない制度といえるのではないでしょうか。

固定価格買取制度は、太陽光発電や風力発電・水力発電など再生可能エネルギーの売電に関する各種ルールを定めた制度で、オーナーにとって売電収益に関するメリットもあります。

今回は、売電に関するルールを理解したい方へ向けて、固定価格買取制度の基本から制度の目的をはじめ、2019年問題などを分かりやすく解説します。また、蓄電池導入を検討している方も、間接的に関係があるので確認してみて下さい。

固定買取価格制度とは

まずは固定価格買取制度とは、どのような制度なのか概要と特徴を解説します。太陽光発電の導入を検討している方は、特に関係があるので確認した後に設置工事などの依頼を行いましょう。

再生可能エネルギーを一定期間固定価格で売電できる

おてがるでんち

固定価格買取制度とは、国(経済産業省・資源エネルギー庁管轄)が定めた制度のことです。制度概要としては、再生可能エネルギーに関するルールを定めています。

おてがるでんち

具体的には再生可能エネルギーで発電した電気を売電する際、一定期間固定価格で電力会社に売却できる制度です。そして電力会社は、固定価格買取制度に従って、再生可能エネルギーの買取義務を負っています。

制度の対象者は、再生可能エネルギー設備を運用している個人・法人と、電力会社です。

オーナーにとってのメリットは、安定して売電収益を確保できる点と、初期費用回収の計画も立てやすいといった点です。

固定価格買取制度のコストと負担

固定価格買取制度は、再生可能エネルギー設備を運用・売電収益を確保したいオーナーにとっては、大きなメリットとなり得る制度です。しかし一方で、電力会社と国民にとっては、負担となる点を知っておきましょう。

固定価格買取制度に沿って電力会社は、各オーナーが売却した電気を固定価格を基準に買い取らなければなりません。ここでポイントとなるのが、買取費用です。

買取費用は電力会社の資産から捻出しますが、厳しい側面もあるため全ての国民から電気料金に買取費用を上乗せ・徴収しています。

そして電気料金には、再生可能エネルギー発電促進賦課金と呼ばれる費用が上乗せされています。

固定価格買取制度の申請方法

固定価格買取制度の申請は、発電量によって手続きが異なります。

50kW未満の場合は、設置者(発電設備を運用する人)が設置業者などへ申請手続きを代行できます。そして、設置業者は、再生可能エネルギー電子申請システムを活用して、事業計画など必要書類を提出します。

一般的には、固定価格買取制度の認定まで約3ヶ月程度かかるのも大きな特徴です。

50kW以上の場合は、設置業者などへ代行できません。ですので、設置者自ら再生可能エネルギー電子申請システムへ登録・ログインし、事業計画などの必要書類を作成・提出を行います。

おてがるでんち

太陽光発電の固定買取

太陽光発電の場合は、固定買取価格を4つに分けています。また、どの固定買取価格に該当するかは、出力によって変わります。

固定買取期間は、10kW未満では10年間、10kW以上では20年間というルールです。

「固定買取価格」(2022年度)
10kW未満の太陽光発電:1kWhあたり17円
10kW以上50kW未満の太陽光発電:1kWhあたり11円
50kW以上250kW未満の太陽光発電:1kWhあたり10円
250kW以上の太陽光発電:入札制度で決定

入札制度は、複数の太陽光発電事業者(運用者)が参加し、固定買取価格を定めます。

そして売電方式については、設備を設置している建物内で発電した電気を使用し余った電気のみ売電できる「余剰買取」と、発電した全ての電気を売電できる「全量買取」に分かれています。

50kW未満:余剰買取に区分される
50kW以上:全量買取に区分される

太陽光発電の固定買取価格は、年々下落傾向・シンプルな区分へ変更といった点がポイントといえるでしょう。

風力発電

風力発電の場合は、発電量ではなく以下4種類の発電方式に固定買取価格が分かれます。ただし、固定買取期間は全て20年間です。

太陽光発電と混同しないようにしましょう。

「固定買取価格」(2022年度)
陸上風力:1kWhあたり16円
陸上風力(リプレース):1kWhあたり14円
着床式洋上風力:1kWhあたり29円
浮体式洋上風力:1kWhあたり36円

リプレースとは、20kW以上の出力を持つ風力発電のことです。また、2017年度から新たに定められた区分です。

また、着床式洋上風力発電のみ2020年度から入札制度へ移行しました。理由は複数ありますが、1つは競争市場が確立しているためです。また、海外は入札制度が普及しているので、参考にしている側面もあります。

全体的に太陽光発電と同等の相場といえるでしょう。

水力発電

水力発電は太陽光発電と同じく、出力によって固定買取価格を分けているのが特徴的です。ただし、固定買取価格は、他の再生可能エネルギーよりも高い水準といった違いもあります。

「固定買取価格」(2022年度)
200kW未満の水力発電:1kWhあたり34円
200kW以上1,000kW未満の水力発電:1kWhあたり29円
1,000kW以上5,000kW未満の水力発電:1kWhあたり27円
5000kW以上30,000kW未満の水力発電:1kWhあたり20円

そして水力発電ならではのルールが、既設導水路活用型についてです。既設導水路活用型とは、既に設置されている導水路(給排水を目的とした水路)を使用した水力発電のことです。

既設導水路活用型水力発電を運用する場合は、固定買取価格が以下のように下がります。

「固定買取価格」(2022年度)
200kW未満の水力発電:1kWhあたり25円
200kW以上1,000kW未満の水力発電:1kWhあたり21円
1,000kW以上5,000kW未満の水力発電:1kWhあたり15円
5000kW以上30,000kW未満の水力発電:1kWhあたり12円

どちらも固定買取期間は20年間と定められています。

国としては新規設備を導入・運用して欲しいという方針から、価格調整していると考えられます。これから水力発電事業を検討している事業者は、導入コストと固定買取価格のバランスも考えた上で判断するのも大切です。

地熱発電

地熱発電とは、地下に存在するマグマから発生する熱を利用して発電を行う設備のことです。地熱発電にはフラッシュ方式とバイナリ方式の2種類に分かれていて、地下の熱水をくみ上げて蒸気でタービンを回すか・温泉や温泉井戸などの熱水でタービンを回すかといった違いがあります。

しかし、固定価格買取制度では発電方式による違いはなく、出力と設備更新の範囲で変わります。

「固定買取価格」(2022年度)
15,000kW以上地下設備流用型:1kWhあたり12円
15,000kW以上全設備更新型: 1kWhあたり20円
15,000kW以上新設: 1kWhあたり26円
15,000kW未満地下設備流用型: 1kWhあたり19円
15,000kW未満全設備更新型: 1kWhあたり30円
15,000kW未満新設: 1kWhあたり40円

固定買取期間は15年で、一般的に初期費用回収まで少なくとも20年間と考えられています。初期費用回収に時間がかかる大きな理由は、発電効率が低い点です。

現状の技術では、地下熱のほとんどを発電に変換できないため発電効率を上げることが難しく、売電収益も限定的となります。

また、個人で設置できる金額ではありませんので、事業規模の大きなエネルギー関連会社のみ利用できるといえるでしょう。

バイオマス発電

バイオマス発電とは、動物や植物から得られるエネルギーを発電に応用した技術のことで、有機物を原料・エネルギーとしています。

また、エネルギーが複数存在するため、発電方式も以下3種類に分かれています。
直接燃焼方式:木くずや可燃性のごみを燃やし、熱を利用してタービンを回して発電
熱分解ガス方式:木くずや可燃性のごみを燃やし、発生したガスを利用してタービンを回し発電
生物化学的ガス化方式: 家畜から排出される糞尿から発生するガスを発酵させてタービンを回して発電

そしてバイオマス発電の固定買取価格は、どのような資材や有機物をエネルギーとするかで固定買取価格が変わります。特に細かい区分といえるでしょう。

「固定買取価格」(2022年度)
メタン発酵ガスを使用した発電:1kWhあたり39円
木くずなどを原料とした発電:2,000kW以上で32円、2,000kW未満で40円
バイオマス固体燃料を使用した発電:10,000kW未満で24円、10,000kW以上は入札によって決める
バイオマス液体燃料を使用した発電:入札によって決める
廃棄物(建設資材)を原料とした発電:1kWhあたり13円
その他のバイオマス発電:1kWhあたり17円

また、固定買取期間は、どの発電方式でも20年間と定められています。初期費用は1kWあたり100万円程度かかるため、太陽光発電よりも高コストといえるでしょう。そのため固定買取価格で考えた場合、高い価格で売電できる木くずなどを原料とした発電などがいいでしょう。

固定買取価格制度の成り立ちと目的

続いては固定価格買取制度の歴史と、制度立ち上げの目的について分かりやすく紹介します。固定価格買取制度は、過去に1度改正されています。

また、改正理由は、今後太陽光発電を導入するオーナーにも関係のある内容ですので把握しておきましょう。

2009年に太陽光発電の買取制度から始まる

旧固定価格買取制度は、2009年に始まりました。旧制度と呼ばれている理由は、2012年に申請書類や規制などを改正したためです。

固定価格買取制度の目的は、環境問題の解決と再生可能エネルギーの普及促進(国内市場の拡大)、そしてエネルギー自給率向上のためです。

2009年当時、ヨーロッパでは環境問題に対応するため固定価格買取制度が実施されていて、再生可能エネルギーが既に普及していました。一方日本は、再生可能エネルギー関連設備は開発・運用されていたものの普及していません。さらに、エネルギー自給率の低さも問題です。

そこで日本は、ヨーロッパの制度を参考にしつつ、原型といえる太陽光発電の余剰買取制度を発足します。

2012年に現在の固定価格買取制度を発足

2009年に発足された余剰買取制度は、再生可能エネルギーの範囲を拡大した固定価格買取制度へ2012年に変わりました。

しかし、2012年に発足された固定価格買取制度は、以下の問題が発生します。

低コストで導入できる太陽光発電のみ普及が進んでいる
再生可能エネルギー発電促進賦課金の負担増加
未稼働案件増加による不正増加

太陽光発電のみの増加は、本来5種類の再生可能エネルギーを普及させる制度という方針とは異なる動きとなってしまっています。

また、固定価格買取制度を支える再生可能エネルギー発電促進賦課金は、負担が増加している側面もあったため改善が必要でした。

未稼働案件とは、売電の権利を確保している状態であるものの、発電設備を導入していない案件のことです。発電設備の導入コストは年々下落していて、売電価格も下落しています。そこで、一部の悪質な事業者は高い売電価格の年に申請を行い、設備導入を先延ばしにすることで不当に利益を伸ばそうとしていました。

未稼働案件の増加は高い売電単価の案件が残ることにもつながるため、結果的に再生可能エネルギー発電促進賦課金も高い状態です。

このような状態から脱却するために、固定価格買取制度を2017年に改正します。簡単に説明すると、未稼働案件に対する規制強化と電力消費の大きな事業者に対する減免など変更・項目の追加となります。

固定価格買取制度施行後の動き

固定価格買取制度が実施されたことによって、どのような変化が起きたのか解説します。

太陽光発電が普及

特に普及した再生可能エネルギーは、低コストで導入できる太陽光発電です。たとえば太陽光発電1kWあたりの費用は30万円前後ですが、バイオマス発電や地熱発電などは1kWあたり100万円前後と大きく異なります。

また、太陽光発電は住宅の屋根に設置など、限られたスペースでも設置・稼働できるため、個人でも比較的簡単に導入できます。

このような事情と固定価格買取制度の発足によって、太陽光発電は特に普及しました。

固定買取価格は下落傾向

再生可能エネルギーが徐々に普及するにしたがって、各設備の開発・販売コストは下がっています。ですので、個人・法人問わず、どちらも導入しやすい環境になりつつあります。

そして各再生可能エネルギーの普及に従って、国では固定買取価格を毎年下げている傾向です。

2019年問題とは

2019年問題とは、太陽光発電の固定買取期間が最初に終了する年、および制度終了後の買取に関する問題を指した造語です。

具体的には、2009年に固定買取期間10年の家庭用太陽光発電を設置した方から、2019年11月以降固定価格買取制度の適用範囲外となります。

しかし、大手電力会社や新電力では買取を実施しているので、売電自体は継続可能です。

ただし1kWhあたり10円以下となるケースがほとんどのため、売電収入が下がるという問題はあります。このような売電価格の下落が、2019年問題として取り上げられていました。

つまり実際は問題というほど大きな問題ではありません。

強いて言えば初期費用回収が完了していない方や、2009年当時の売電価格で2019年以降も収支計画を立てていた方にとっては、少々デメリットといえるでしょう。

固定価格買取制度満了後の対応方法

2019年問題に関する情報によって、固定価格買取制度満了後の運用に不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

固定買取価格制度が満了となったあとも売電できますし、他の運用方法も選べます。

買取を行っている電力会社へ引き続き売電する

1つ目は、前の項目でも紹介したように、引き続き電力会社へ売電するという方法です。大手電力会社の多くは、1kWhあたり10円前後で買取を行いますので、売電収入は減少する可能性があります。

しかし、初期費用をすでに回収している場合は、維持コストと電気代削減に回すこともできるでしょう。

売電をやめて自家消費型太陽光発電へ切り替える

2つ目は、自家消費型太陽光発電へ切り替える方法です。自家消費型太陽光発電とは、発電した電気を全て自宅・オフィス内で消費する運用方式のことです。

自家消費型太陽光発電は近年注目されている方式で、電気代削減効果も期待できますし、次に紹介するZEH住宅にもつながります。

売電収入がないので一見するとデメリットと感じるかもしれません。しかし、電気代削減効果を大きくできるので、手元に残るお金を増やせます。

ZEH住宅との組み合わせを考える

3つ目はZEH住宅との組み合わせです。

ZEH住宅は、創エネ(太陽光発電など自宅でつくるエネルギー)の方が、消費エネルギー(水道光熱費など)よりも多い状態の住宅を指します。

そしてZEH住宅でポイントとなるのが、エネルギーを創ることができる設備の存在です。太陽光発電は買電量を削減できるので、ZEH住宅の方針と合致します。

ZEHへの関心がある方は、固定価格買取制度満了後も太陽光発電を運用し、創エネを進めましょう。

固定価格買取制度は課題もあるが安定的に売電できる制度

固定価格買取制度は、太陽光発電の普及率が高過ぎるなど課題も一部残っていますが、安定して売電できるメリットの多い制度です、

また、太陽光発電の場合は、固定価格買取制度終了者が2019年に発生しましたが、大きな混乱や問題は発生していません。

2019年問題は売電価格の下落という問題ですが、自家消費型太陽光発電やZEH住宅への活用など、対応策は複数あります。

これから太陽光発電の導入を予定している方は、固定価格買取制度の理解・申請準備を行った上で判断するのが大切でしょう。

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エココト編集長

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