家庭用蓄電池の2020年の価格は?これまでの価格推移、今後の価格見通しも
蓄電池を家庭に設置するには、平均的な蓄電容量である6kWh程度でも、100万円以上の費用がかかります。蓄電池の市場価格は、年々低下していますが、まだまだ高額な製品であると言えるでしょう。
ですが、FIT(固定価格買取制度)を終了したご家庭では、42円/kWhから10円/kWh程度と、4分の1になってしまった電気の売電収入を埋め合わせるため、蓄電池のご購入を検討しているのではないでしょうか。
そこで、今回の記事では、蓄電池の価格がこれまでどのように推移してきたのか、また2020年の価格動向について解説していきます。今後の価格見通しについても説明しますので、蓄電池導入の参考にしてください。
蓄電システムの導入費
蓄電池を導入するには、蓄電池本体のほか、蓄電システムを構成するパワーコンディショナ(パワコン)などの周辺機器やケーブルなどが必要となります。
蓄電システムを構成する製品一覧
・蓄電池本体
・パワーコンディショナ
・DC/DCコンバータ
・電力コントローラ/モニタ
・ケーブルやセンサなど
ただし、製品によっては、パワコンにDC/DCコンバータが統合されていたり、蓄電池本体にパワコンが内蔵されていたりします。
蓄電池の工事費用は今後下がるか?
これらの蓄電システムの費用のほか、蓄電池の設置工事や電気工事などを併せた工事費用が必要です。
蓄電池の工事費用は、15〜40万円程度が相場と言われていますが、人件費の割合が大きく、設置環境にも左右されます。また、アメリカの蓄電池の設置料は30万円程度、再生可能エネルギーの先進国であるドイツでも工事費は10〜13万円程度であるため、多大な低減は今後も見込めないでしょう。
参考:経済産業省
蓄電池のこれまでの価格推移
一方、蓄電システムの価格は、2013年の約30万/kWhから、2015年の約22万/kWhまで低下しました。これは、6kWhの蓄電池では、180万円から132万円に価格が下落したことを意味します。
日本の蓄電システムは高額?
ですが、2015年当時においても、アメリカの蓄電システム価格は平均約15万円/kWhでしたし、ドイツでは13~15万円/kWhの安価なリチウムイオン蓄電システムが一部販売されていました。これらと比較すると、日本の蓄電システム価格は、高額であったと言えるでしょう。
蓄電システム価格は2015~2019年の間高止まり
その上、日本の蓄電システム価格は、2015~2019年の間、それほど低下しませんでした。
その理由としては、2015年の時点で蓄電池の認知度は高まっており、国内の適正な価格に落ち着いたからとも言えますし、本格的な普及が始まった2019年(一部の家庭でFIT期間が終了)まで、量産効果による価格下落が起きなかったからとも言えるでしょう。また、災害の多い日本では、蓄電池に対する品質要求が高く、蓄電池メーカーも低価格帯の蓄電システムの開発に注力しなかったことも原因の一つかも知れません。
参考:経済産業省
2020年の蓄電池の価格は?
しかし一方で、経済産業省は、蓄電システムの価格として、以下を目標に掲げていました。
寿命15年の蓄電システムに対する目標価格
2017年・・・22.5万円/kWh
2018年・・・18万円/kWh
2019年・・・13.5万円/kWh
2020年・・・9万円/kWh
寿命10年の蓄電システムに対する目標価格
2017年・・・15万円/kWh
2018年・・・12万円/kWh
2019年・・・9万円/kWh
2020年・・・6万円/kWh
特に、寿命15年の蓄電システムに対しては、2020年の目標価格として9.0万円/kWhを設定。これは、FIT期間が終了したご家庭が、太陽光パネルで発電した電気の自家消費により、15年程度で蓄電池の導入費用を回収できる価格です。
もちろん日本では、災害に伴う停電対策として蓄電池を導入することも多いことから、蓄電池の導入費用を回収可能かどうかだけでは蓄電池の価格を議論することはできません。ですが、2020年から、9.0万円/kWhに近い価格の蓄電システムがスマートソーラーとテスラから販売されることとなり、現在話題となっています。
参考:経済産業省
スマートソーラーの「スマート蓄電システム」
スマートソーラーが2020年5月より販売を開始したのは、蓄電容量がおよそ12kWhと大容量でありながら、定価を110万円台に抑えた「スマート蓄電システム」です。
「ストレージ・システム」と「ハイブリッド・システム」の2タイプを用意しており、蓄電容量はそれぞれ11.8kWhと11.5kWh、停電時出力はそれぞれ4.0kWと3.5kWです。停電時でも、太陽光発電と連携できますし、200V家電を使用できます。
ハイブリッド・システムには、太陽光発電用のパワコンも兼ねるハイブリッドパワコンが含まれ、太陽光パネルで発電した電気の高効率な運用が可能です。
10年の無償メーカー保証(有償で15年保証可能)も付いており、15年以上の稼働が見込める6,000サイクル以上の充放電を保証しています。タブレットやスマートフォンを通した、発電量・蓄電量・使用量の確認、充放電のモード設定が可能です。
このように、スマート蓄電システムは、決して他の蓄電システムに見劣りする製品ではありません。
そして、その価格は、ストレージ・システムが118万円、ハイブリッド・システムが115.3万円と国の目標価格9万円/kWhを達成。また、国や地方自治体からの補助金も見込めるようです。
参考:スマートソーラー株式会社
テスラのパワーウォール
一方、電気自動車で有名なテスラモーターズジャパンは、蓄電容量13.5 kWh、価格99万円の蓄電システム「Powerwall(パワーウォール)」を2020年春から販売すると発表しています。
パワーウォールは、パワコン一体型の蓄電池です。パワーウォールを最大10台まで接続可能で、その場合の容量は135kWhにも達します。出力は、5kWと国産のハイエンド蓄電システムと同等ですので、一般的なご家庭ならば停電時でもほぼ全ての電化製品を同時に使用できます。
運転モードのコントロールや充放電状況をスマートフォンを通して制御・監視できますので、システム面においても国産の蓄電池に劣るものではありません。また、保証も10年となっていますので、蓄電システムの保証期間として標準的です。
しかし、サイズが1150 x 753 x 147mm(高さ x 幅 x 奥行き)、重量が114kgと非常に大型の蓄電池です。また、2020年4月の段階では、短期間の設置や補助金の申請に必要なJET認証が取得できておらず、蓄電池の設置は開始されていないようです。そのため、予約は受け付けているようですが、設置日も確定しないというのが現状です。
参考:テスラモーターズジャパン
蓄電池の低価格化は進展するか?
これらの低価格帯の蓄電システムは、これから普及が始まるところです。
しかし、その価格は、従来の蓄電システムの2分の1から3分の1と大きく異なります。そのため、2020年は、従来の蓄電システムの価格下落が一気に進展することが見込まれます。また、これまで高価格帯の蓄電システムの開発に力を入れていた蓄電池メーカーも、10~15万円/kWh程度の低価格帯の蓄電システムを販売する可能性があります。
蓄電池価格の今後の見通し
それでは今後、蓄電池の価格はどのように推移していくのでしょうか。
2017年からテスラのパワーウォールが販売されているアメリカでは、すでに低価格帯の蓄電池が市場を席巻しており、そのシェアの大部分をテスラとLG化学が占めています。日本でも、2~3年の間に10万円/kWh程度の蓄電池が普及すると考えられます。
一方、低価格帯の蓄電システムにおける、リチウムイオン電池だけの価格は4万円/kWh程度が標準的です。しかし、車載用リチウムイオン電池の価格は現状でもかなり安く、日産リーフの62kWhのリチウムイオン電池は2万円/kWh程度だと言われています。そのため、家庭用蓄電池でも、量産効果によってリチウムイオン電池のみの価格が2万円/kWh程度になる可能性があります。それにより、蓄電システム全体としての価格も、8万円/kWh程度まで低下することが見込めます。
まとめ
蓄電池の価格推移や今後の価格見通しについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
一旦は大きく低下した日本の蓄電池価格ですが、ここ数年は高止まりの状況にありました。しかし、安価な蓄電池の普及が始まる2020年は、蓄電池価格の下落が予想され、蓄電池メーカーが開発する製品の傾向をも左右する年となる可能性があります。
蓄電池の情報を集めている方は、蓄電池メーカーの動向や販売業者の価格変動をチェックしてみてはどうでしょうか。