空気亜鉛電池とは?二次電池化が実現すれば大容量・低コストの蓄電池に!

えらぶ家 2020-5-14
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空気亜鉛電池をご存知でしょうか。ボタン式電池として見たことがある方もいるかも知れません。実はこの電池、大容量化や低コスト化が容易なため、リチウムイオン電池の後継として、未来の家庭用蓄電池や車載用蓄電池などに利用される可能性があります。

今回の記事では、この空気亜鉛電池とは何かというところからメリット・デメリットまで、わかりやすく解説しています。また、実用化に向けた研究開発の進展状況についても説明しています。

空気亜鉛電池とは

空気亜鉛電池とは、正極に空気中の酸素、負極に亜鉛を用いる電池のことです。正極が不要で、正極側に開けた穴から空気を取り込んで動作します。形態としては、主にボタン型電池として利用されており、使用時には、酸素を遮断するためのシールを剥がしてから使います。シールを剥がすと、放電状態となりますが、このシールを再度貼り直せば、劣化を抑えて長持ちさせることが可能です。現状、充電式として実用化することが難しく、使い捨てが前提の一次電池として、補聴器やフィルムカメラ、非常用電源などに用いられています。

空気亜鉛電池のメリット

空気亜鉛電池には、軽量・安価・安全・大容量という、電池にとっての優れた特徴があります。以下でそれぞれについて解説します。

小型・軽量

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空気亜鉛電池は、正極を充填するスペースが不要であることから、電池内に負極材料である亜鉛を大量に充填することができます。そのため、電池を小型化・軽量化しやすいという利点があります。

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安価

負極材料の亜鉛は、埋蔵量が多く、安価な物質なので、電池の低価格化が可能です。また、世界中の様々な場所で産出するため、供給リスクが小さいという強みがあります。

高い安全性

また、空気亜鉛電池は、安全性が高いという利点もあります。空気亜鉛電池は、電解質として、主に不燃性のアルカリ水溶液を用います。そのため、熱的に不安定な電解質を用いるリチウムイオン電池と比較して、安全性の高い電池を構成可能です。

電池容量の理論限界が大きい

空気亜鉛電池は、理論的には、エネルギー密度を約1370Wh/kgまで向上させることが可能です。その値は、正極と負極がそれぞれコバルト酸リチウムと炭素である、標準的なリチウムイオン電池の理論エネルギー密度583Wh/kgの2倍以上にも及びます。そのため、空気亜鉛電池は、大容量化できる可能性があります。

なお、実用化されている電池のエネルギー密度は、空気亜鉛電池が450〜500Wh/kg、リチウムイオン電池が200〜250Wh/kg程度となっています。ただし、それぞれのエネルギー密度は、空気亜鉛電池が一次電池、リチウムイオン電池が二次電池のものです。

空気亜鉛電池のデメリット

しかし、空気亜鉛電池は、出力電圧が低い、エネルギー効率が悪い、寿命が短くサイクル数が小さいなどのデメリットがあります。特に、エネルギー効率の低さやサイクル数の小ささ、そして短寿命であることから、繰り返し使用できる二次電池としての利用が困難です。

出力電圧が低い

空気亜鉛電池は、放電時の理論電圧が1.65Vと、リチウムイオン電池の3.7Vと比べると低いです。そのため、より大きな電圧を得るには、直列につなぐ必要があるため、電池の形状に一定の制限が生じます。ただし、アルカリ乾電池が1.5V、鉛蓄電池が2.0Vですので、電池全体で見れば、決して低い電圧ではありません。

また、正極の反応、つまり酸素から水酸化物を生成する反応が負極の反応よりも遅く、実質的には約1.25Vと、理論電圧が得られないという課題もあります。

エネルギー効率が低い

充電で要したエネルギーに対して、放電で得られるエネルギーが少ないという欠点もあります。上述したように、放電時に得られる電圧が約1.25Vであるのに対し、充電時は理論値の1.65V以上の電圧を必要とします。そのため、空気亜鉛電池は、放電時に得られる電力に比べ、充電時に多くの電力が必要となります。

寿命が短い

空気亜鉛電池は、酸素を取り込むことで放電するため、密閉することが難しく、電解質の劣化が進みやすいという欠点があります。そのため、一次電池、二次電池に関わらず、一度使用を開始した後の寿命が短いです。

サイクル数が小さい

空気亜鉛電池では、放電すると、負極材料の亜鉛が電解質中に溶け出します。そして、充電時には、この溶解した亜鉛が、電流分布の不均一性により負極以外で析出してしまい、電池内に樹枝状晶(デンドライト)を形成。これが空気と接触することで、短絡(ショート)してしまいます。そのため、空気亜鉛電池は、数回の充放電で使用できなくなってしまうのです。

リチウムイオン電池の後継となり得る空気亜鉛電池

ですが、空気亜鉛電池にも、充電式電池がなかったわけではありません。研究段階ではありましたが、空気亜鉛二次電池の実用化のため、様々な対策が講じられました。例えば、正極の反応性を向上させるために白金やイリジウムなどの貴金属触媒を用いる、電解質へ添加物を加えることで亜鉛の溶解を防ぐ、電池の構造を工夫することで電流分布を均一にするなどが挙げられます。

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参考:国立研究開発法人科学技術振興機構

最近では、ポストリチウムイオン電池の有力候補として注目されており、研究開発は加速しています。

セラミック技術により空気亜鉛電池の充放電を可能に

例えば、日本ガイシは、伝導性セラミックスをセパレータ(正極と負極を絶縁する部材)に使用。溶解した亜鉛は通さず、水酸化物だけを選択的に通す伝導性セラミックスで、デンドライトと空気との接触を物理的にブロックしました。それにより、短絡を防止し、繰り返し充放電することを可能にしています。

参考:日本ガイシ株式会社

安価な鉄などの金属が貴金属触媒の代用に

また、シドニー大学は、貴金属触媒の代わりに、鉄やコバルト、ニッケルなど、安価かつ資源量が豊富な金属を触媒として使用できることを発見。これらの金属の組成やサイズ、結晶化度を制御することで、充放電を60回繰り返した後でも、電池容量が10%しか低下しなかったと報告しています。

参考:一般社団法人エネルギ—情報センター

まとめ

リチウムイオン電池の後継として有望な空気亜鉛電池について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

近々、実用化されそうな蓄電池としては、全固体リチウムイオン電池があります。しかし、この電池は、従来のリチウムイオン電池の熱的な不安定性を改善したもので、極端な機能の向上などはありません。
ですが、空気亜鉛二次電池などの次世代蓄電池は、実用化されたならば、家庭用蓄電池や車載用蓄電池の急激な大容量化や低コスト化が期待できます。

リチウムイオン電池も低価格化していくことが予想されますので、各家庭が家庭用蓄電池を設置し、電気を自給自足する未来も近いかも知れません。

▼「まず蓄電池を導入したい!」「仕組みや特徴を改めて知りたい」という方はこちらの記事から読んでみてください。
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