ピークシフトの意味とは?蓄電池での活用方法についても解説
電気料金を削減する方法は、電気料金を変えたり節電したりするだけでなく、ピークシフトやピークカットといった考え方を用いるのも効果的です。電力会社ではピークシフトを活用した電気料金プランも提供しているので、言葉自体は見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、電力自由化や太陽光発電と比較して、ピークシフトの意味や仕組み・メリットについては分かりにくい側面もあります。
今回は、あらゆる方法で電気料金削減を考えている方へ向けて、ピークシフトをはじめ、似た用語のピークカットやボトムアップなどの特徴を解説します。また、蓄電池とピークシフトを活用した節電について紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ピークシフトとは
まずは、ピークシフトの原理や意味を分かりやすく解説します。電気料金プランや電力の計算はややこしさもありますが、ピークシフトは比較的シンプルな方法です。
仕組みから1つ1つ理解していきましょう。
ピークシフトは電気を移動する
ピークシフトとは、ピーク「頂点・頂上」とシフト「移動」を組み合わせた用語です。そして、電力業界で用いられているピークシフトは、電力使用量の少ない時間帯に貯めた・余った電気を、電量使用量の多い時間帯で使用する方法を指します。
イメージ
• 夜間の電力使用量が3kW、余った・貯めた電気が2kWある状態
• 日中の電力使用量が5kW
• 夜間に余った・貯めた電気2kWを日中に使用し、5kW-2kW=3kWの削減効果を得る
ピークシフトの特徴やメリット
ピークシフトのメリットは、電力使用量の少ない時間帯に余った・貯めた電気をピーク時に使用することで、電気料金削減効果を得られる点です。
特に高圧電力の工場やオフィスビルなどでは、ピークシフトによるメリットを得やすいといえるでしょう。
高圧電力は、過去12ヶ月間の電力使用量の中で、最も高い電力使用量(需要電力)を基準として電気料金単価を設定します。そのため、通年では電力使用量が低い状態でも、偶然電力使用量の高い瞬間が発生すると、次のシーズンで電気料金が上がります。
また、一般家庭や個人商店などが契約する低圧電力は、事前に電気料金単価が決まっているので、仕組みは異なります。
ピークシフトの課題
ピークシフトは電気料金の削減効果を期待できる一方、電力会社の電力供給事情や、ピークシフトを実行するための設備投資費用などで課題もあります。
電力会社が提供しているピークシフトプランは、原子力発電所で発電された余剰電力を夜間に供給し、その代わり夜間の電気料金単価を抑えていました。
しかし、東日本大震災によって原子力発電所の稼働が停止し、夜間の余剰電力供給量は減少傾向となりました。そのため夜間の電気料金単価が、見直されているケースもあります。
ただ、設備投資費用を捻出できれば、蓄電池や太陽光発電、エコキュート、HEMSなどでピークシフトを実行でき、デメリットばかりではありません。
ピークシフトに似た用語や運用
続いては、ピークシフトと似た用語や関連する用語について紹介します。ピークシフトと間違えやすい内容ですので、混同しないためにも各用語の意味や特徴を整理しておきましょう。
ピークカット
ピークカットとは、最も高い時間帯の電力消費を抑える節電方法を指します。ピークシフトとの違いは、電力使用量に対する考え方です。
• ピークカット:ピーク時の家電製品の使用や充電を控えて、電力使用量を抑える
• ピークシフト:余った・貯めた電気をピーク時に移動し、電力使用量を抑える
他には、実行するために必要な設備機器の有無も違っています。
ピークカットは、省エネ設備の導入だけでなく、家電製品の使用時間帯や充電の時間帯を変えることで、ある程度ピークを抑えられます。
しかし、ピークシフトの場合は電気を貯める・作る必要があるため、ピークシフトプランがない場合、蓄電池などを設置しなくてはいけません。
ボトムアップ
ボトムアップは、電気料金の安い夜間になるべく電気を使用し、日中の電力使用量を削減・節電を行う方法です。
ボトムアップ方式で節電するためには、まず電気料金プランを確認・見直す必要があります。なぜなら、従量電灯制などのプランでは、時間帯によって電気料金単価は変わらないためです。
また、ボトムアップ方式を活用する場合は、電気料金プランをピークシフト型へ切り替え、生活も見直すのがポイントです。
例
• 洗濯および脱水を夜間に行う
• お風呂を沸かす時間帯を夜のみに限定する(エコキュートや電気温水器)
• スマホやパソコンの充電は夜間のみ
• 日中に使用する家電製品は省エネ製品に買い替える(エアコン、冷蔵庫、テレビ、ヒーター、LED照明)
最大デマンド
最大デマンドとは過去12ヶ月(1年間)の間で、最も高い電気使用量を指します。また、電気使用量は30分ごとに計測され、高圧電力の電気料金計算のみに適用されます。
ですので、一般住宅や個人商店・小規模オフィスなどで契約している低圧電力は、最大デマンドを用いません。
高圧電力の電気料金は、以下の計算式で求めます。
• 基本料金=電気料金単価×最大デマンド(契約電力)×力率割引・割増
• 電力量料金=電力量料金単価×使用電力量+燃料費調整額
• 再生可能エネルギー賦課金
• 電気料金=基本料金+電力量料金+再生可能エネルギー賦課金
最大デマンドは節電という点でピークシフトと関連していますが、混同しないよう気を付けましょう。
ピークシフトプランとは
ここでは電力会社が提供している、ピークシフトプランの仕組みや特徴を解説します。また、実際に提供されているプランも紹介するので、電気料金の見直しを検討している方も参考にしてみてください。
時間帯ごとの電力量料金単価が変わる
ピークシフトプランは、時間帯ごとに電力量料金単価が変わります。
低圧電力の電気料金プランは、基本料金と電力量料金に分かれています。そして、電力量料金は、電気の使用量に応じて変わるのが特徴です。
一般的にピークシフトプランは、2種類・3種類の電力量料金単価で構成されていて、夜間が最も安い設定となっています。
ピークシフトプラン
• 朝、日中:最も高い傾向
• 夕方:中間の料金設定
• 夜間:最も安い傾向
ピークシフトプランの例
ピークシフトプランのイメージを掴むため、東京電力のプランを紹介します。夜トクプランなど、複数のプランでピークシフトを導入しているのが特徴です。ですので、比較的簡単に切り替えられますよ。
• 夜トク8プラン:21.16円23時~翌日7時、他の時間帯は32.74円
• 夜トク12プラン:22.97円21時~翌日9時、他の時間帯は34.39円
• スマートライフプラン:17.78円1時~6時、他の時間帯は25.80円
電気料金プランの変更を検討している方は、ピークシフトにも着目してみるのもおすすめです。
電気料金プランの変更以外でピークシフトを行う方法
ここからは電気料金プランの変更以外に、ピークシフトを行う方法を紹介します。
蓄電池を活用する
ピークシフトを実行するためには、蓄電池の活用もいいでしょう。
蓄電池は再生可能エネルギーで発電した電気だけでなく、電力会社から買電した電気も貯めることができます。
電力使用量の少ない時間帯に電気を貯めておき、ピーク時に使用することで電気料金の削減が可能です。しかし、家庭用蓄電池の設置費用は、100万円以上必要です。
節電目的の場合は、蓄電池単体で短期間に初期費用を回収するのは難しい可能性があります。ですので設備投資費用を確保できる場合や、とにかく電気料金削減を重要視している場合(蓄電池の設置費用は負担と考えない)であれば、導入メリットがあります。
法人の場合はデマンドピークシフトシステムも選択可能
法人の場合は、デマンドピークシフトシステムを検討するのもおすすめです。デマンドピークシフトシステムは、蓄電池とコントロールシステムを組み合わせて、自動的にピーク時を予測・蓄電池でカバーできます。
高圧電力の場合は、電力使用量のピーク時を確認した時点で基準となる電気料金単価が上がってしまいます。つまり、一般家庭のように蓄電池の運用だけでは、最大デマンドを抑えることは難しい状況です。
そこで、プログラムによる電力使用量の予測を行うことで、ピークを更新する直前に蓄電池を使用できます。
ピークシフトは蓄電池との相性が良い電気の運用方法
ピークシフトは、低圧電力・高圧電力どちらのケースでも電気料金を抑えることが可能で、活用メリットもあります。また、蓄電池との相性が良い運用方法です。
電気使用量の少ない時間帯に蓄電池へ貯めた電気は、ピーク時に移動することで電力量料金を削減できます。課題としては、蓄電池の設置費用を回収しにくく、設備機器のコストパフォーマンスという点で必ずしもお得とはいえないところでしょう。
これから蓄電池の導入を検討している方や、節電を実行している方はピークシフトについても考えてみてはいかがでしょうか。
▼電気代の節約については、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
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