卒FIT後は蓄電池も活用するのがおすすめ!
太陽光発電を設置しているご家庭が、いずれ直面する事象の1つといえば卒FITではないでしょうか。卒FITは文字通りFIT制度からの卒業を意味する言葉で、売電収益に頼らない運用方法が必要となります。
しかし、これまでの運用方法は、太陽光発電で発電した電気を電力会社へ売電し、収益を得るのが標準でした。そのため多くの方は、卒FIT後にどう対応すればいいのか分からないかと思います。
そこで今回は、卒FIT後の運用方法が気になる方へ、太陽光発電と蓄電池の併用やメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
卒FITとは何か
まずは、そもそも卒FITとは何か、そしてFIT制度の期限について解説します。
卒FITとはFIT制度の適用期間から外れること
FIT制度には期限があり、太陽光発電の場合は申請から10年間もしくは20年間と定められています。また、住宅に設置するタイプの太陽光発電は、基本的にFIT=固定買取期間は10年間です。
そのため、永久的に固定買取価格で電力会社に売電することはできません。このようにFIT制度の条件から外れる・固定買取期間が終了することを、「卒FIT」と呼びます。
卒FITは2019年11月から始まっている
FIT制度が発足されたのは2009年ですので、2019年から卒FITの該当者が出ています。また、具体的には2019年11月頃から、卒FITとなっている方がいます。
つまり卒FITは、既に始まっているということです。
卒FITとなった方達は、これまでのように固定買取価格で電力会社に売電できません。たとえば、2009年の固定買取価格(出力10kW未満、太陽光発電のみ)は、42円/kWhでした。
しかし卒FIT後は、電力会社が設定した独自の価格に合わせて売電するか、独自価格で買取対応している新電力へ売電するといった状況です。
ちなみに大手電力会社では、2022年現在卒FITとなった方達が発電した電気を引き続き買取対応すると発表しています。また、買取価格は7~10円/kWh程度と、安くなってしまうのが大きな特徴です。
卒FITによって発生する課題と蓄電池の関係
続いては、卒FITによって利用者に生じる課題と、蓄電池との関係性について解説します。また、卒FITは再生可能エネルギーを運用している個人、法人どちらにとっても対策を立てておくべき内容です。
FIT制度から外される
前段で紹介しましたが、卒FITはFIT制度から外れることを指します。そして、FIT制度から外れた場合、以下のような状況になります。
• FIT制度で定められた価格で売電できない
• 固定価格で売電できない
• 今後も必ず売電できる訳ではない状況となる
FIT制度が適用されている時は、政府が定めた価格で10年間・20年間売電できました。しかし、卒FIT後は、固定価格で売電できないだけでなく、そもそも長期的に売電できるかどうかも分かりません。
将来的に売電出来ない可能性
2022年時点で、大手電力会社と新電力の一部では卒FIT対象者へ向けて、引き続き再生可能エネルギーの買取に対応しています。
ちなみに大手電力会社は卒FIT後の買取について、以下の価格で設定しています。
• 北海道電力:8円/kWh
• 東北電力:9 円/kWh
• 東京電力:8.5円/kWh(再エネ買取標準プランの場合)
• 北陸電力: 8円/kWh
• 中部電力:7~12円/kWh(再エネスマートプランの場合)
• 関西電力: 8円/kWh
• 中国電力: 7.15円/kWh
• 四国電力:7円/kWh(買取プランの場合)
• 九州電力:7円/kWh
• 沖縄電力:7.7円/kWh
しかし、今後も10年・20年・30年と、太陽光発電の買取を行うという保証はありません。また、太陽光発電は、設置に伴う森林伐採や買取に伴う電力会社・国民の負担など、数多くの課題も残されているため、卒FIT後の売電も廃止になる可能性があります。
自家消費という選択肢に蓄電池も必要
太陽光発電の固定買取は永久ではありません。さらに、卒FIT後の買取は、各電力会社の義務ではありませんので、状況によっては廃止となる可能性もあります。
そこで最近では自家消費型太陽光発電と呼ばれる運用方法について、注目が集まっています。
自家消費型太陽光発電とは、太陽光発電で発電した電気を自宅で全て消費する運用方法のことです。そのため、売電は行いません。
太陽光発電システムを自家消費型へ切り替えるためには、発電した電気を売電しないよう配線の切り替えやパワーコンディショナーの交換が必要です。また、発電した電気の損失を抑えるために、蓄電池も重要です。(蓄電しない場合、発電した電気は消えてしまう。)
なぜなら太陽光発電システムには電気を蓄える設備はありませんので、別途蓄電池が必要となります。
このように卒FITと蓄電池は、「売電をしない」・「自宅で消費する」といった考え方から関連しています。
卒FITによる蓄電池導入のメリット
ここでは卒FITによる蓄電池導入のメリットについて紹介します。
電気代の削減効果を伸ばせる
卒FIT後に蓄電池を導入し自家消費へ切り替えた場合、電気代の削減効果を伸ばすことが可能です。
太陽光発電は晴れの日や日中しか発電できません。そのため、曇りや雨の日・夜間は太陽光発電でカバーできません。
しかし、蓄電池を導入しておけば日中に発電した電気を蓄え、夜間や曇りの日・雨の日に放電することで節電効果を伸ばすことができます。
非常時に役立つ
卒FIT後に限らず蓄電池を導入することで、非常時に効率よく電気を活用できるようになります。
たとえば大きな地震によって長期停電を余儀なくされた場合、蓄電池の有無によって以下のような違い・課題が発生します。
• 太陽光発電のみ:夜間は発電できないため、照明や夜間の調理は難しい
• 蓄電との併用:日中に蓄電しておき、夜間の照明や調理、暖房・冷房などに使用できる
また、夏場は夜間でも非常に暑いため、冷房機器などが必要です。反対に冬場は、夜間の方がより冷えるので暖房機器も必要となります。
さらに災害時には盗難や不法侵入といったリスクも高まるため、夜間に照明機器を使用できるようにすることも大切です。
このように蓄電池は、災害時でも継続的に電気を使用する上で欠かすことのできない装置です。
売電価格に左右されない運用方法が可能
卒FIT後に蓄電池を活用すれば、売電価格に左右されない運用方法も可能です。つまり前段で触れた、自家消費型太陽光発電と蓄電池を組み合わせた方法のことです。
自家消費型太陽光発電自体は、蓄電池が無くても切り替えることはできます。しかし、発電した電気を蓄えられないのでロスも大きく、安い価格でも売電した方が良いでしょう。
ただ、卒FIT後の売電価格は、各電力会社および各企業の裁量によって変動してしまいます。
そこで蓄電池を組み合わせれば、自家消費型太陽光発電に切り替えても発電ロスを抑えることができますし、売電価格に左右されない運用方法も可能です。
売電がストップ・廃止されても影響を受けない
自家消費型太陽光発電および蓄電池を組み合わせた運用方法であれば、仮に各電力会社の買取サービスがストップしたり、売電自体廃止になったりしても影響を受けません。
また、蓄電池があるので、太陽光発電で発電した電気を蓄えながら必要な時間帯・状況に合わせてエネルギーをコントロールできます。
政府の方針としては、2022年時点でも卒FIT後の売電自体に規制をかける動きはありません。しかし、売電によるコスト面での負担が増加傾向になれば、電力会社独自の判断で価格の値下げ・サービスストップというケースもあるかもしれません。
売電は永久にできるサービスではないと考えて、今後の太陽光発電の運用を考えましょう。
卒FITによる蓄電池導入のデメリット
続いては卒FITによって、蓄電池を導入・太陽光発電と併用する場合のデメリットを紹介します。蓄電池を活用した自家消費型太陽光発電には、注意点もあるためよく確認した上で判断しましょう。
蓄電池の費用回収は難しい
蓄電池は費用回収の難しいシステムです。なぜなら単体で発電できないからです。
太陽光発電の場合は、設置時にFIT制度へ申請し、10年間・20年間固定買取価格で売電収益を得られます。そして、売電収益を初期費用回収に充てることができます。
しかし、蓄電池の場合は初期費用を回収する機会がありません。初期費用の回収を考えている方にとっては、デメリットと感じるところです。
蓄電池を導入する場合は、節電効果で間接的に初期費用を回収するイメージで考えるのがいいのではないでしょうか。
蓄電池の初期費用が高い
蓄電池は家庭用でも100万円以上の本体価格のため、手頃な価格とはいえません。そのため、初期費用を少しでも抑えたい・現時点で予算がない方には、購入ハードルの高い装置です。
また、蓄電池は本体価格だけでなく配線・設置工事費用も別途かかるため、合計150万円ほどの費用負担となることもあります。
蓄電池を導入する場合は、補助金制度を利用したりローンを組んだりといった方法も考えながら計画を立てましょう。
補助金制度は2022年時点で、国と各自治体独自の2種類から選ぶことができます。
• SII「蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金」
• 各自治体独自の補助金
▼より詳しく蓄電池の設置費用を知りたい方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
蓄電池設置にかかる費用の相場は?製品の価格や工事費用などの相場を個別に紹介
▼補助金や助成金に関してはこちらからどうぞ。
必見!蓄電池の補助金|導入するなら今!?
まとめ
卒FITによって発生する事象とは、以下のような内容となります。
• 固定価格で売電できない
• 売電価格は変動する、基本的に安い
• 今後売電を継続できるか不明
特に上記のような課題もあるため、自家消費型太陽光発電および蓄電池に注目が集まっています。
卒FIT後に蓄電池を導入するメリットは、発電した電気を蓄えて任意の時間帯に自家消費できる点です。また、蓄えた電気を災害時に活用することで、避難生活を少しでも豊かにできます。
卒FITは、再生可能エネルギーを活用・売電している全ての方に関係があります。この機会に卒FIT後の運用方法や、蓄電池の導入について検討してみてはいかがでしょうか。