仮想蓄電サービスとは?電気代節約になるケース・ならないケースをご紹介
電力会社が新しく提供し始めた、仮想蓄電サービスをご存知でしょうか。このサービスは、蓄電池設置の代わりになるものとして提示されていますが、その内実は一体どのようなものなのでしょう。
今回の記事では、仮想蓄電サービスの詳細や、サービス加入時のメリット・デメリットについて、具体的にシミュレーションしながら解説していきます。ぜひ参考にしてください。
仮想蓄電サービスとは
仮想蓄電サービスは、太陽光発電などで発電した電力を、売電する代わりに、買電する際の電力として仮想的に充当してくれるサービスです。FITの期間中には、48円/kWh(2009年度FIT価格)と高価格で売ることができた電力が、FIT期間終了により7〜9円/kWhと急激に落ち込んでしまったご家庭向けに、電力会社が提供を開始しました。
仮想蓄電サービスの仕組み
仮装蓄電サービスとは、簡単に説明すると、余剰電力を自宅で蓄めるのではなく、電力会社が預かる形で、別の時間帯に使用できるというものです。
1ヶ月間にこちらが売った電力の総量を電力会社が記録し、ある一定の上限以下の電力量分だけ、購入した電力量から差し引いてくれるというサービスです。
つまり電力会社が各家庭に蓄電池を設置してくれるわけではなく、電力会社がどこかに蓄電池を用意するわけではありません。仮想蓄電サービスと銘打ってはいますが、実態は、太陽光発電を保有しているご家庭向けの、新たな料金プランと考えることができます。
また、このサービスには、電力会社毎に、いくつかの加入条件があります。どの電力会社も設定している条件としては、
・太陽光発電システムを保有している
・FIT期間を終了している、
などの条件が挙げられます。電力会社によっては、指定の料金プランに加入しているといった条件もありますので、お使いの電力会社が仮装蓄電サービスを提供しているのであれば、詳細について確認してみることをおすすめします。
仮想蓄電サービスのメリット
仮想蓄電サービスのメリットは、電気料金がお得になるケースがある、ということです。FIT期間が終了したご家庭では、電気の買取価格が7〜9円/kWh程度に一気に下がります。一方、電気を購入する場合、電気の使用量にもよりますが、20〜30円/kWh程度が標準で、1kWh当たり10〜20円程度高くなりますので、この高くなった分の料金がサービスの利用料金を超えれば、電気代は安くなるということになります。
仮想蓄電サービスのデメリット
一方、仮装蓄電サービスのデメリットは、あくまで料金プランの一つであり、蓄電池の代わりとはならないことです。停電時に備えて電気を貯めておけるわけではありませんし、停電時、特別に電気を供給してもらえるわけでもありません。
また、太陽光発電の発電状況や電気の使用状況によっては、むしろ電気料金が高くなってしまうケースがあります。このサービスでは、蓄電量の上限、つまり売電する代わりに無料利用が可能な電力量の上限によって、サービスの利用料金が変わります。そのため、蓄電量がこの上限に達しなかったり、ご家庭の電気使用量が少なかったりする場合に、電気代の総計が高くなってしまうケースがあります。
東京電力の「再エネおあずかりプラン」
東京電力では、この仮想蓄電サービスを「再エネおあずかりプラン」という名称で提供しています。このプランでは、月額4,000円で、毎月250kWhを上限に、売電するはずだった電気を無料利用できる電気として充当。電気の使用料金は、時間帯や使用量で変わりますが、最も高額な電気の使用分を無料利用分として充ててくれます。
「再エネおあずかりプラン」加入時の電気代シミュレーション
それでは、この再エネおあずかりプランでは、どの程度の電気使用量で電気代節約につながるのでしょうか。「スタンダードS」という料金プランの場合を考えてみます。
東京電力エナジーパートナーのスタンダードSの電力量料金(税込)
〜120kWh・・・19.88円
120〜300kWh・・・26.46円
300kWh〜・・・30.57円
出典:東京電力エナジーパートナー
まず、月間の電気使用量が120kWh以下の場合、売電の買取単価が8.50円/kWhですから、売電するよりも無料利用する方が1kWh当たり11.33円安くなります。しかし、120kWh全てが無料利用できたとしても、その総額は、単に売電する場合に比べて1,359.6円安くなるだけであり、利用料金4,000円の方が高額となってしまいます。
次は、月間の電気使用量が120〜300kWhの場合はどうでしょうか。この場合、無料利用の方が1kWh当たり17.98円安くなり、180kWh分全てを無料利用した際は、3,236.4円安くなります。無料利用できるのは、250kWhが上限ですから、仮想蓄電量の残りの70kWhを、120kWh以下の無料分に充てることができます。これを加えると4,029.5円となりますので、利用料金4,000円を差し引いた29.5円が節約分となります。つまり、毎月の電気使用量が、およそ300kWhを超えるご家庭から、電気代を節約することができます。
ただし、以上の計算では、太陽光発電による余剰電力が毎月250kWh以上あることを前提としていますのでご注意ください。
関西電力の「貯めトクサービス」
一方、関西電力では、「貯めトクサービス」という仮想蓄電サービスを提供しています。このサービスでは、以下の3つのプランを用意。東京電力のプランと同様、余剰電力分の電気を無料利用できる電気として充当します。無料利用分を最も高額な電気の使用分としてくれるのも同様です。
関西電力の貯めトクサービスの3つのプラン
50kWh・・・800円/月
150kWh・・・2,350円/月
無制限・・・5,000円/月
出典:関西電力
「貯めトクサービス」加入時の電気代シミュレーション
それでは、この貯めトクサービス加入時についても、どの程度の電気使用量であれば、電気代の節約となるのか見ていきましょう。貯めトクサービスの仮想蓄電量50kWhのケースで、かつ「なっトクでんき」という料金プランの場合に考えてみます。
関西電力のなっトクでんきの電力量料金(税込)
15kWh以下・・・285.00円(定額)
15〜120kWh・・・20.31円
120kWh〜300kWh・・・24.10円
300kWh〜・・・27.80円
出典:関西電力
まず、電気使用量が120kWh以下の場合、売電の買取単価が8.0円/kWhですから、無料利用する方が1kWh当たり12.31円安くなります。しかし、50kWh全てを無料利用したとしても、その総額は615.5円となりますので、利用料金800円の方が高額となります。
一方、電気使用量が120kWh〜300kWh帯の使用分を無料利用分で賄ったとすると、売電に比べて1kWh当たり16.1円安くなります。そのため、仮想蓄電量の50kWh分全てを120kWh〜300kWh帯の電気に当てると、売電に比べて805円安くなり、利用料金800円に届きます。つまり、毎月の電気使用量がおおよそ170kWhを超えれば、電気代を節約できるということが分かります。
まとめ
仮想蓄電サービスについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
仮想蓄電サービスは、蓄電池を設置してくれるわけではないので、決して蓄電池の変わりとなるものではありません。
ですが、太陽光発電による余剰電力量やご家庭の電気使用量によっては、電気代を節約できるサービスです。FIT期間が終了したご家庭の新たな料金プランとして、ご検討してみてはいかがでしょうか。
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